湯豆腐/墨晶
 
 
          掌編

 夜、蚊取り線香の匂いがする路地を歩き、近所のスーパーマーケットまで焼酎を買いに出かけた。
 店内の豆腐売り場で、五年前死んだ友人のコバヤシが身を屈め、神妙な横顔で木綿豆腐を吟味しては傍らの籠に放り込んでいた。
「コバヤシ・・」
 オレの声に僅かに驚いたように顔を上げたコバヤシは、暫くオレが誰なのかわからないようだったが、
「アハハハッ! あれ、元気? 何だよ、そのアタマ!」
 と、オレの両肩を覆うほど伸ばし放題の白髪混じりの蓬髪を笑った。
「キリストの真似か?」
 と、云うので、
「オマエさんも復活しちゃったのか」と云うと、
「・・・・・え
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