恋昇り/トビラ
「一ノ世(いちのせ)君、今、どこ?」
「三日月橋の下」
「三日月橋か。状況は?」
「そこそこ追い込まれてる」
「了解。すぐに行くね」
「ありがとう。榛名(はるな)さん。持ちこたえられなかったら、ごめんね」
「大丈夫。すぐに行くから。ちゃんと待っててね」
「うん、待ってる」
「素直でよろしい」
「まあ、それくらいしか取り柄がないからね」
一ノ世君はいつも、一人で十人分くらいの仕事をこなす。
誰よりもイレギュラーに対処しているのに、いつだって自信無さそうにしている。
そんな一ノ世君を見ていると、私は苛立ってしまう。
一ノ世君自身に対して、一ノ世君を都合よく
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