杉谷家にて/コタロー
あたしは富裕な慈善家の女性にひきとられた。
あたしの住みはじめる館は芝生の薄い波が海の小弯に向かって続いている小高い丘の上に建ち、庭
には美しい幹を見せる白樺とぶなと名前のわからない木々、鯉の泳ぐ小さな池の周りには水仙が咲い
ていた。その隣にある花壇には、紫陽花や石楠花などの花が忘れないでと訴えるかのように西風に揺
れながら背の高さを競っている。ただ、あたしの好きな薔薇はなかった。門から玄関にかけては青緑
色に切れ切れに白い稜線のある敷石が並べられていて、その上を柔らかい陽光が斑な縞模様を注いで
いた。そして、今。館に到着したその日から美しい苔むした飛び石の流れを踏みしめることにな
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