夜中に我が子が泣きだした/こたきひろし
 
若い夫婦。若い父親と若い母親。
夜中に子供が泣きだした。二人共に睡眠を無理矢理むしり取られた。
寝床から起き出したのは母親の方だ。
明かりをつけるとベビーベッドの上で泣いている我が子の側に行った。
抱き上げるとオムツを確かめる。しているようだ。
父親は明日も仕事。朝が早い。
如何に我が子とはいえ夜泣きは苛立つ。
つい声を出して言ってしまった。「さっさと済ませておとなしく寝かせてくれないか」
その言葉に母親は声を大きくした。「赤ちゃんは泣いて知らせるの。泣くのが商売なんだから、父親だったら温かく見守ってぐれない」
その言葉に父親は何も言えなくなった。
仕方ないので布団を頭から被る
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