夜中に我が子が泣きだした/こたきひろし
被る。
その様を見て母親は「何よ自分ばかり」と苦々しく夫に目をくれた。
オムツ替えをしながら母親は聞こえるように言った。
「女は大変なの、死ぬくらいの痛みにたえて子供を産んで、その先は育児に追い回されるんだから。」
父親は布団に潜りこんで聞こえない振りをした。
それでも母親は続けた。「それに比べて男はいいわよ。気持ちいい思いだけするんだから。」
その言葉に父親はカチッときてしまう。
「それが女の役目だろ。男は外で仕事して必死になって家族を養っていくのが役目なんだからさ」
その言葉に母親は苛立つ。
「やめてよそんな風に言うの。男が立場が上だって言いたい訳?」
お互いの言い合いはその後も続いて、男と女の論争は
子供がすやすやと寝入った後も夫婦の睡眠を妨げてしまった。
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