初めて燃える山のように 前編/竜門勇気
僕が師匠と呼ぶ人がいた。
僕の家から自転車で10分ほどの前山(はしたやまと読む)の中に居を構え、仙人としか言えない暮らしをしていた齢は60代成りたてといった風貌の男だった。
そもそもが彼が落とした空き缶を拾ったのが付き合いの始めで、最初はただの浮浪者でしかなかった。いや、最後まで一浮浪者だった。
おじさん、落としたよ
空き缶を放る。
彼は振り向きもせず、それを背中で受け止めて膨らんだナイロン袋の乗った自転車を押し続けた。
お父さん、拾わなくてもいいがここにそのままってのは無しだ。
落っこちた空き缶を持って僕はその背中に語りかけた。
どうしたってこんな事になってるのかは知らな
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