坂井信夫『黄泉へのモノローグ』について/葉leaf
詩において定型は韻律でありリズムである。と同時に、定型は認識の枠組みであり、ストーリーの大枠である。コミュニケーションの観点から言うと、定型によって読者は気持ち良く詩行を受容し、また一度定型に慣れてしまえばスムーズな情報伝達が行われる。
本詩集『黄泉へのモノローグ』において、坂井は一つの定型をいくつにも変奏している。ここには、人間というもの、世界というもの、黄泉というものに対する一つの認識の枠組みが提示されている。坂井は自らを、そして読者をこの定型による認識に縛り付けようとするのだ。
夢からの目覚め、死者との出会い、映画館への移行、それは何かを象徴しているのかもしれないが、象徴関係はさし
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