ジャンヌ・ダルクの築いたお城 少女Aとテントウムシ/田中修子
私は1997年に起きた神戸連続児童殺傷事件の犯人、酒鬼薔薇聖斗こと少年Aが好きだった。少年Aは当時14才で中学生という報道で、私は当時12才で小学6年生か中学1年生だった。彼も私も、とびきりの条件付きの愛のなかで生きていた。あれだけ派手な事件を起こし、「私はあの子の母親をいっしょうけんめいやっていたのに、あの子がちゃんと育たなかったなら、私があの子を育ててきたあの時間は、いったいなんだったんでしょう」そんなふうに母親に言わせた彼に拍手喝采だった。
私がいくらいい点数を取ってきても、あの女は満足しなかった。そのわりにあの女は、あの女の友人のダウン症の子は好きだった。私はふしぎに素直なその子を
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