首吊りの森/田中修子
 
 赤黒い熱い塊が喉のおくでガラガラガラ音を立てている。からまってまるまった舌で窒息しそうだ。舌が体に飲み込まれようとしている私は、必死で舌をン、と指でつまんでまっすぐにしてよだれが垂れる。幾千幾万どこまでも木と揺れている人が続く、うすぐらい首吊りの森でさまよっている。

 首吊りの森にすでに吊られた人々は黒い影となってゆらゆらと風に吹かれておりあんまりに心地良さそうで、誘われるからできるだけ見ないようにしていた。もりあがる根に足をとられ、舌をひっぱりながら歩いている。この森を出よう。いつになるかは分からないが、私は絶対に出なければいけない。ほら、蝶の青いあかりがみえる。ずっとずっと見えている。
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