首吊りの森/田中修子
る。
首吊りの森に入るまえは砂漠にいた。砂と岩だけの砂漠。
あっちへ行こう。きっとあっちこそ、今度こそ正しい方向だ。どんなにいっしょうけんめいに走ってもかならず転んで大怪我をして、自分がどこから来たのかも、どこへ行こうとしていたのかも、どれだけ時間がたったのかもわからない、ただ、すべてがむだだったことだけが分かった。涙も流すはしからひからびて、やがてなにも感じなくなった。骸骨のようになっていく体をただ引きずって歩いていた。
そんなとき青い蝶がきまぐれにフラリとやってきたのだ。水のあるところ、緑のあるところがあるのだろうか。強い風に足跡はさらわれて来た方向は分からないし、蝶を追い
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)