たとえばこれが10月の/はるな
2月が終れば3月がくるということを、無論ずっと知ってはいたけれども、たいていこのくらいの時期になるときゅうに理解してしまう。毎年、性懲りもなくだ。2月と3月のあいだには、いくつもの恋が横たわっていて(いくつもの、そしてひとりの)、わたしはそこをいまは一人で歩かなくてはならない。梅の花が例年よりはやく咲いて散ること、今年はあたらしい街を歩いていること、いつだったかの桜の木がまだその場所にあること。沈丁花の蕾や、かさかさになってもまだ茎から折れずにいる紫陽花の枯れた花、みるたびに膨らんでいく蕗の薹。
暖かい日の空がだんだん薄まって冬をなくしていく。かちかちに冷えた風がやすりをかけたように少しずつ
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