たとえばこれが10月の/はるな
ずつ柔らかくなっていく。娘の前髪がおどろくほどはやく伸びるので、勢いあまって自分の髪まで切ってしまう。髪の毛をきることなんてなんでもないことだったのに、いまは。
理解することは、良いことだよ。でもすぐに忘れてしまう。だったらそれは、理解ではなくてたんに梅が咲くようなことではないのかしら。あるいは散るような。散っても、また咲くような。
たとえばこれが10月であればよかったかなと考える。
たとえばこれが10月の、さめてしまったコーヒー、何も塗っていない爪。お行儀よくならんだマニキュアのボトル、たとえばこれが10月で。でもわたしには想像できない、なんども行きつ戻りつした日々のうしろに枯葉が舞うとこ
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