秋、帰る/もっぷ
その年の秋も、あちらへこちらへさまざまの波紋を投げかけながら冬へと育っていった。東京のような雑多な坩堝にあっても例外ではなかった。
かの都会の片隅、聞こえよく庶民の人情が息づいているなどといわれている下町ではあるけれど、実際のところ住民からは大いに疑問の寄せられる、そんな廃れた町に一人の少女が暮らしていた。
切ない半木造アパートの一階の一番北向き、夏には涼風が避けて通り、冬には木枯らしの格好の標的、そんな部屋である。
秋は乳離れをしないままに捨てられた仔猫のように少女につき纏って、日日自分が在るということを色彩でも匂いでも音による便りでも主張をやめなかった。
「なぜ、そんなに君
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