悲鳴/島中 充
 
    悲鳴
二〇〇三年、高田信也は仕事の都合で夜中、実家から眠っている小学三年生の娘を連れ、堺から岸和田の自宅に臨海線を通ってカローラで帰る。羽衣に差し掛かると右手にステンレスパイプが林立している。高い煙突から炎をあげ、水銀灯に照らされプラチナに輝く夜景、石油化学コンビナートが眼前に浮かび上がってくる。堺泉北臨海工業地帯は空に浮かぶ要塞のように見えた。隣接して浜寺公園があり、コンビナートと公園の間を臨海線は走っている。臨海線には信号が少なく、昼間はコンビナートへ行く大型車両で混み合った。真夜中になると急激に通行量が減り、ここぞとばかり暴走族が現れた。
その日も信也の車両の前を二人乗りのオート
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