束縛の必要性/あおい満月
(だれか、この腕を解放してくれないだろうか)
そんな声が、帰りの車中で本を読んでいると、心の背中から聴こえてきた。
確かに私たちは「繋がれて」いると思う。こうして液晶に向かっているあいだも、私たちは何かに「繋がれて」いる。それは時間という現実であり、現実という時間なのだ。それでは、私たちはそれらから本当に、解放されたとしたらどうだろうか。
作家の西加奈子さんの『炎上する君』という短編集のなかに、ストレスが原因で身体が風船のように宙に浮き上がってしまう病の話があるが、その話とは真逆に、私たちはあらゆるストレスから解放され
[次のページ]
戻る 編 削 Point(4)