しろうからKへの公開書簡 #04/しろう
かつて僕は蒟蒻ゼリーを食べた。
何がしかモノを書く行為の下で「書き出しが一番難しい」というようなことが一般によく言われている気がするが、そうではないと思う。それはむしろ元日に餅を食べるのと同じくらいにお手軽であるために、不意に咽喉を詰まらせてしまう危機に陥ることを過剰に怖れてしまうが所以の自縄自縛であろう。誰だってなんもない平坦な道ですっ転んで赤っ恥はかきたくないから「生まれてから自分の両足で歩き出すまでが一番大変だった」と嘯いてみせる。そこに逆説的に物書きにおける恥が内在している。餅を至極慎重に臓腑の底まで飲み下してから書き出しをものして転ばないように取り繕った上で必然のごとく転んでみ
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