Miz 3/深水遊脚
 
「コーヒー豆をください。インドネシア200g コロンビア200g まろやかブレンド200g でお願いします。それとちょっとお手洗いをお借りします。」

こんなふうに帰りがけにコーヒー豆を頼み、準備してもらっている間にお手洗いで化粧を直すのはいつものことだった。でも今日のそれは、誰かに話しかけないと崩れてしまいそうで、話しかける機会をなんとか作って救いを求めたようなものだった。それを感じとり、体調を気遣ってくれた大宮さんに軽くお礼を言って、お手洗いに入って鏡をみた。やはり泣いていたようだ。スポンジで涙を拭き取り、ブラシでパウダーを乗せてファンデーションとチークをどうにか見られる状態にして、目を書
[次のページ]
[グループ]
戻る   Point(1)