Miz 1/深水遊脚
意味がわからない。最初にその人と話したときはそう考えた。いまでもわかってはいないけれど、そのときのわからなさは、身体中がふわふわして頭が妙に重くて、臍から下の感覚がほとんどなかったと思う。なにしろ唐突だった。
「ヒーローになってみないか」
初対面の相手にこんな言葉づかいでこんな素頓狂なことを話す人などこれが初めてだった。そのあと何人かそんな人に会うことになるのだけれど。その不躾さに加えて、馴染みの喫茶店の珈琲を味わい、その余韻でしばらく静かに過ごしたいという平穏を破られたことはわりと重大だった。初めに感じたのは強めの不快感だったと思う。
「着ぐるみのアルバイトのお話ですか?興味
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