竹林の横道/游月 昭
いつもの時間にいつもの道を通り、仕事場へ向かっていた。私にとってあまりにありふれた時間に、このまま老いまで直行させられるように感じられて、私は横道にそれてみることにした。
出来るだけ細い道に迷いこんで、仕事に遅れてしまえばいいとさえ思っていたので、竹林に挟まれた薄暗い道を見つけて嬉しくなった。勿論初めて通る道。一直線に北へ伸び、道の果ては暗くて見えない。時々ドアミラーに笹の葉が当たってチリチリと音を立てる。いつまで経ってもやはり果ては見えない。北へ行くのならいつかは海沿いの道に出る筈。なんとなく襲ってくる不安を久しぶりに味わい、過ぎ去った日のことを思い出していた。
私は新築
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