秋の雲/八布
 
 秋の雲、と聞くと鱗雲のような、空の高い層にある雲を思い浮かべるが、その日の雲はロールパンのようにふわふわとした、いわゆる綿雲だった。言ってみれば季節はずれのその雲の形に、それでも僕が秋を感じたのは、もしかすると旅情のせいだったかもしれない。秋の雲は人を旅に誘うと言う。そして僕はこの文章を他でもない、旅先で書いているのだ。
 旅に出てつくづく思うことは、旅人に必要なものは食料でも着替えでもなく、道だということだ。道が無ければ人は旅に出ることはできない。当たり前すぎるほど当たり前のことだが、これは意外に盲点で、少なくとも僕は自分が旅に出るまでこんな簡単なことにも気づかなかった。だから僕が歩いたあと
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