秋の雲/八布
あとに道ができるという一節は、詩的には素晴らしいが、残念ながらフィクションだと言わざるを得ない。道があるからこそ旅ができるのだし、旅という概念があるからこそ、人は安心して旅人になれるのだ。
今、僕は道の終わりでこの文章を書いている。つまり僕の旅はここで終わりというわけだ。目の前にはおだやかな海が広がり、そのまた先には水色の空が広がっている。そう、前述した秋の雲はその空に浮かんでいるのだ。旅の終わりの空に悠然と浮かんでいる雲を、僕はどう考えたらいいのかわからない。羨むべきか?それとも憧れるべきか?答えはもうわかっている。思い切って背を向けて立ち去る他ないのだ。なぜならこの先に道はないのだし、そもそも最果てという言葉は人のためにあるものではないのだから。
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