夜更けの紙相撲 夏の墓/そらの珊瑚
 
 私は蝉の声の中で、ひぐらしのものが一番好きである。少し緑がかったボディに透き通るような翅というビジュアルも美しいと思う。夕暮れや明け方にカナカナ……と聴こえてくれば、夏の終わりを含んでいるようでなんとも物悲しい。今年は雨続き、気温も低めだったせいか、蝉の声が少なかったような気がする。
 蝉の腹部はほとんどが空洞で、共鳴室と呼ばれているらしい。自ら楽器となってそれを鳴らすために地上に出てくる。愛を語るにはちょっとうるさい音ではあるけれど、ロマンチックな虫という気もしないではない。
――ロマンチックだけが死を忘れさせる媚薬。
「はるがしんだら、どんなおはかがにあうでしょう」とは、寺山修司の言
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