ルオー/soft_machine
 

 ルオー (Georges Rouault 1871-1958)


 時計の針は五時を指していた。
 カーテンを開けると、車窓に張りついた幾つものこまかな水滴の中で、夜明けを待つ街がさかさに震えた。
 低い雲はもう雨を降らせ終えたらしく、風に引きずられ、つる草のように貌を変える影の下を、ひとりの老人が、色褪せて紫がかった灰色のコートの前をあわせながら前屈みに歩いていく。信号が青になり、バスはゆっくりと停車場に滑りこんだ。
 私は終点のアナウンスを聞きながら、他の乗客に先立ち、寒々とした音を立てるアスファルトを踏んだ。がらんとした構内からくる、すえた匂いが鼻をつく。
 街灯の下で
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