熊が倒れた!/海人一翔
 
虻がブンブン唸って何かに集まってきている。
鬱蒼とした熊笹をかき分けて近づくと異臭が鼻を突いてきた。
「わー何!」
思わず佳乃は顔を覆って叫んだ。
しゃがみこんだ彼女を跨ぐようにして、久良木は、異臭のする窪地を覗き込んだ。
そして、防寒着の懐からすばやくイリジウム衛星携帯を取り出してプッシュボタンを押した。
「クマが倒れた・・・」
「何、何、あれ人でしょ?絶対熊じゃなわよお!」
「わかってるよ。俺だって!」
「え、誰と話したの?」
「今は言えない。さあ、一刻も早くここから離れよう!さもないと俺たちも消される。」
「ええ?一体全体、何言ってるのよ。しっかり説明してよ!」
佳乃
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