痕の上に立つ人/葉leaf
詩を書く人は何かの痕の上に立っている。何かと闘うわけでもないし、何かと妥協するわけでもないし、何かと和解するわけでもない。その「何か」はもはやそこには存在しないのだ。しかしその「何か」の痕はくっきりと残っていて、詩を書く人はその「上に立つ」のである。つまり、何かの痕に支えられながらも、何かの痕を踏みしめる行為が詩を書くという行為なのである。
痕跡は、喪失の痕跡かもしれないし、獲得の痕跡かもしれないし、流れの痕跡かもしれない。親しい人と別れたあとにその人の痕跡が残る。新しい仕事についてスキルを身につけその痕跡が生きる。自然の姿に感動した心の流れの痕跡が残る。人が踏みしめている大地にはたくさんの
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