痕の上に立つ人/葉leaf
 
んの痕跡がネットワークをなしながら大小さまざまな形をして存在していて、人はその痕跡に細かな根を伸ばしていくのである。
 例えば孤独が詩を書く人の必要条件のように言われることがある。あるいは傷が詩を書く人の必要条件のように。だが孤独も傷も、数多ある痕跡のうちの相対的な一部にすぎないのである。孤独は、誰かと関係を結びたいという心の流れが常に挫折したその流れの痕跡である。傷は、自らの存在に欠損が生じたその欠損の痕跡である。同じように、当たり前のように生活するということは家族関係、近所関係、友人関係、社会関係などの絶え間ない獲得であり、その獲得の痕跡が生きていく。また、心を動かすようなできごと、例えば新
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