掌編「悪夢」/イナエ
むかし、ぼくが田舎で少年をやっていたころ、野性の動物が家の周りを彷徨いていた。畦を通れば、蛇が逃げ、イタチやムジナに出会うことも、珍しくはなかった。イノシシは畑の作物を喰い荒らしていた。雪の日には山からシカが人里におりてりてきた。
なかには気配だけの生き物もいて、一人で深い藪の中や山林に入って行くと、どこからか現れ、ぼくを取り囲み、さわさらと話しかけてきた。耳を澄ませば、何も聞こえないのだが、歩き始めると追ってくるのだ。
ダム湖の上流へ一人漕ぎ上ったときなひどかった。碧色の淵の底からじっと見つめる眼を感じて、水遊びしていたこどもが、カッパやカワウソに、引き込まれたという話が、真実
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