運河の夜/藤原絵理子
 

H:「もっと前に,きみに出会ってたらどうだっただろう,って考えてたんだ」
S:「もっとステキだったかも知れないし,もっとつまんなかったかも知れない」
H:「プラスマイナス…ゼロ…」
S:「そう.あのままニシンが獲れ続けたら,つまんない港町になってたかも…」

S:「けど,あたし,タラの話って好きだな.そうやって空想するだけでも楽しいじゃない」
H:「今の状況に限って言えば…」
S:「ん?」
H:「夕闇が周りの付属物を隠してくれてるし,なかなかムードもあるし…」

H:「きみには少々,役不足かもしれないけど,腕組んで歩くなんてのはどう?」
S:「あら.ずいぶんご謙遜ね
[次のページ]
戻る   Point(1)