静かにしている/はるな
ことし一番の冷え込みでした、と滑舌のわるい男が喋っている。昨日と明日の気温や服装について話つづける。雲が、保存のわるい油絵みたいにばりばりにひびわれてそこから橙色がのぞいていて、電気を点けていない16時すぎの部屋からはそれがよく見える。いつから、いつからこんなふうにこの部屋は外の世界と親和するようになったんだろう?部屋のなかのすべては橙に浸されたように一様に眠っている。ここから出ていくか、あるいはここにあるすべてを捨てることでしか外との「距離」を避けるしかできない、けれども「すべて」を捨てることなんてできないのだし、ここから出て行ったさきはひとまず「外」でしかないので、わたしは日の当たらないソ
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