油と身体/はるな
 

泣きながら歩いた日はひもじくて、自分の体から精子の匂いがした。
似合わない色を着て、どうしてこんなところまで来てしまったんだろうって思っていた。
花は季節によっていろいろ違う。椿とかたんぽぽとかしゃくなげとかあじさいとか。それから蒸し暑く晴れた日の草のにおい。しめって、でも不快じゃない。自分とはぜんぜんちがうものだとよくわかったから、安心して触ることができた。

終わろう、とおもって、何度も世界は終わった。物語を閉じるのと似たように。いちど転んで、起き上がるごとに終わって、そしてはじまった。慣れることなんてできなかった。世界は(物事は)、つねに起こり続け、終り続けていたから。
わたし
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