That's fiction bunny/済谷川蛍
 
 どうにも不安な夜がある――。

 だいぶ前から、夜になると潮が満ちるように暗鬱な気分に浸るようになった。夜っていうのは、そういう孤独があるものだと、最初の頃は粋人ぶったりしていたが、最近はおびただしい不安に胸を蝕まれるようで、恐怖しか感じなくなってきた。アイツが現れたのは一ヶ月くらい前だろうか。
 アイツというのは、ウサギだ。ベッドの上で夜の気配にヤラれてくると、ヤツが現れる。最初は他愛もない錯覚だと思ったが、どうやらそんなヤワなものじゃなさそうだった。ウサギはぽぉんとボールがハズむようにこちらに飛んできて、目の前に止まったかと思うと、またぽぉんと飛んで、窓ガラスをすり抜けて闇に消える。幻
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