夕暮れのピンチヒッター/済谷川蛍
 
 子供たちが野放図に電柱に貼っていった夢を剥がす仕事、時給700円。珍しい仕事に「これは」と思ったが、窓口へ持っていくのは辞めた。求人ファイルの分厚さは重複した内容によって水増しされている。目新しく新鮮な仕事はめったに入ってこない。だからといって、子供たちの固着した夢を、お好み焼きのコテみたいな道具と薬品を使って、わずかな残りカスさえ許さず削りとる仕事は無情過ぎて僕には合わない。だから僕はいかにも明日も無職ですといったツラで職安を出た。
 図書館に着いた。借りた本を返すのだ。本を2冊司書に手渡すと、司書は無表情でバーコードを読みとる。ピーーー。ピーーー。と、何度もエラー音がして首をひねる。僕はも
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