『く の 人』/るるりら
 

想像力だけで生きるなんて悲し く  
それでも あらんかぎりの言葉をめぐらして 書く 
かんがえて かんがえてを くりかえすほどに 
言葉は みじかく ほんの一行で事足りる 
あんまりといえばあんまりに短い 【好きです】に 
届けなかった言葉に 体は くの字に 折れ曲がって ゆ く 
プラットホーム列車が出るたびに 凍る 
様々な不響和音で構成された沈黙が  
ゴミだと言い聞かせても ドクドクする文字を凝視するから 
ゴミをゴミとして捨てることができずに 掌の中で握りつぶされて 
さらに結晶化するのを もてあましてゆ く 
朝日の中で わたしそびれた言葉は 
夕闇の中で
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