吉が駆け抜けたあと、道の土はまだ温かかった。

踏みしめた草がしおれ、空気がわずかに痛い。

自分の身体が熱を帯びているのだと
初めて知ったが、その熱は内側に留まらなかった。

犬が吠え ....
ある朝、吉は身体が
昨日より軽いことに気づいた。

一歩踏み出すと景色がずれ、
二歩目で木々が後ろへ流れた。

走ろうとしたわけではない、
身体が先に行ってしまったのだ。

息が追い ....
屏風山の奥へ進むほど、吉は自分の名前が薄れていくのを感じていた。

獣の気配、腐葉土の匂い、夜の冷え。

どれもが吉を拒まず、同時に呼びもしなかった。

山では鬼でも人でもない、ただの音の ....
 マイナンバーカードの更新に必要な書類が届いた。一週間、放置していた。しかし、ユウスケは明日、久々のしっかりした仕事であったので、今日の内に彼は証明写真を撮りに行こうと思った。そういった手間のかかる事 ....  
 書斎は寒かったが、ユウスケは籠城を決め込んで小説を書く事にした。何が彼をそうさせるのか分からない。しかし、ここ数日、彼は小説の習作ばかり書いていた。しまいには昨日、ブックオフで小説を十冊ほど買 ....
[LGBTIQの詩人たちの英詩翻訳 しょの2」
  田中宏輔2 ラファエル・カンポ聖母子
https://po-m.com/forum/showdoc.php?did=395437

ラファエ ....
最初に気づいたのは語りを知らない子どもだった。

空に向かって「今、呼ばれた」と言ったのだ。

その夜から村では同じ言葉が漏れ始める。

「呼ばれた気がした。」と。

囲炉裏で誰かが口 ....
あの村では丘の話をする時、必ず声を落とす。

囲炉裏の火が安定した頃、誰かが言う。

「昔、風が妙に長く吹いた年があった。」

名は出ない。

鬼の名も、娘の名も。

ただ「越えた ....
風は、もう吹いていなかった。

丘には草の音だけがあり、
見た目には何ひとつ変わっていない。

吉だったものは両手を見つめていた。

何かを掴んだ記憶はあるが、思い出せない。

熱だ ....
 
 窓の外を大きな白い雲が流れていて、それでも晴れている。畑の玉葱の葉がシャキッと伸びている。この玉葱はユウスケの父が植えたものだ。しかし最近父に会っていない。連絡もしていない。友は東京にいて、地 ....
「鯖詰缶太郎『紙、ふぶき。』集約一例 」澤あづさ
  https://www.breview.org/keijiban/?id=13638

この雑文はネット投稿板B-REVIEWに投稿した批 ....
ニーブ・シャトル ファイン:小学酒造
「真冬の月の中で知人と会うような慌てふためく感じ」
「氷皿に青々した氷を見るような香り」
「達人の足取り、壁紙の接着剤、飲み込んだ後少し星のような棘」
 ....
 なけなしの金で買った東京マルイのハイキャパのコールドマッチを売ることにした。
 おもちゃみたいなレーザーサイト2つと、化粧箱がなかったから、左用だけと銃の保護の意味でナイロン製のホルスターを付 ....
 ユウスケは空をじっと眺めていた。先ほどまで晴れていたが、今、不吉めいた大きな灰色の雲一つが、頭上に居座っている。
 ユウスケはやっぱり禁煙薬によって、マズい味しかしないハイライトを揉み消すと、ベラ ....
最初に動いたのは空気だった。

丘の反対側、
澄乃は口を開く準備だけをして、
立ち止まっていた。

風が来る。

春一番ではないが、
沈黙を正当化するには
強すぎる風だった。

 ....
名を呼ばれなくなったというより、
名が役に立たなくなった。

丘を下り、また登る。

その途中で誰かとすれ違った。

顔は見えないが、その影は
吉と同じ歩幅で反対方向へ進んでいった。
 ....
丘は、いつ行っても同じ形をしていた。

草の匂い、風の向き、空の低さ。

吉は越えたはずなのに、
気づけばまたここに立っていた。

戻ったのではない。

同じ地点を、違う時間で
踏 ....
 怠かった。朝から薬を何錠も服して、書斎の暖房は頭をぼうっとさせ、足は冷えたままだった。ここに回覧板がある。開いてみたがユウスケの頭の中に情報が入ってこない。外は小雨がふっていた。傘もささず、ユウスケ ....  起きると時計は七時を指していた。本日は水曜で、ゴミ出しは無かった。安堵しつつ、体中が重たかった。窓から外に目をやると雨が降っている。ここでユウスケの鬱っ気を確信した。一階寝室から出て、二階キッチンに ....  咲子(七)


 心部(こころ)
 ▽「心」をもとにしてできていて、「精神作用」に関係する文字を集めた。漢字の偏になるときは「忄(りっしんべん)」、脚の部分になるときは「 (したごころ)」の ....
{引用=――または「観察者としてのわが人生」}

最近、またしても嫌だなと思うことが目につくようになった。それは二〇二六年二月に行われた衆議院議員選挙で与党の自民党が大勝し、それにかこつけてある野 ....
鬼と呼ばれる前、
吉は境を知らなかった。

山と村の間に引かれた線は、
土にも風にも刻まれていない。

それでも夜になると、
体の奥がざわついた。

行ってはいけないと
教えられた ....
人々が夜空の星を拝んでいる頃。

山奥の誰も立ち入らぬ湿地で、
三郎の体は
静かに泥へと溶け込んでいった。

星は高く、人々が空を見上げて
感謝を捧げるたび、三郎の生身の真実は、
より ....
ずっと後の時代。
ひとりの子が、渚でその小さな石を拾い上げた。

石は少しも光らなかったが、
子は生涯その石を掌から手放さなかった。

誰かを救えなかった夜、
石は掌の中で同じ分だけの重 ....
この方の詩すべてにいえることですが、ただ一言(ひと
こと)

    大好きっ!

笑 これしかありません。 ほかに何もいうことがないの
で、これで終わりにしたいところですが、それではあま ....
 冷えた朝である。くっきりとした青空が広がっている。玉葱の葉がシャキッと健気に伸びている。
 ユウスケは暖房の効いた書斎で砂糖入りアイスコーヒーを飲みながら、ぼうっと小説のあらましについて考えて、つ ....
苦しかったので、苦しみを手放すために、本を読んだり、書いたり、考えたり、病院へ行ったりし、へんな会合へ参加したり、ボランティア活動をしてみたり、様々な種類の仕事をしてみたりもした。
どうして ....
山の方から重厚な声が落ちてきた。

「河童三郎の命と引き換えに、この地を護ろう。」

雲が裂け、夕暮れの空に
濡れたような一つ星が灯った。

沼は沈むことなく守られ、
ダムの計画は ....
三郎が岩場に膝を折ると、
重い声が滝飛沫に混じって降ってきた。

「命を差し出す覚悟はあるか。
その命は、もはや
元の場所へは決して還らぬぞ。」

龍神の声が止むと、
滝の音だけが一層 ....
雨上がりの湿った夜、
三郎は村長の枕元に音もなく立った。

三郎が去った後、
座敷に残されていたのは、
一枚の古びた血判状であった。

「おらの命ば龍神に捧げる。したから、三郎沼わ沈めね ....
散文(批評随筆小説等)
タイトル 投稿者 Point 日付
『越境の衝動』 第九章/熱が他者に残る[group]板谷みきょう026/2/15 19:22
『越境の衝動』 第八章/速度だけが先に来る[group]126/2/15 19:20
『越境の衝動』 第七章B/名を呼ばれない場所[group]026/2/15 19:18
小説の習作 原稿用紙三頁 #08田中教平126/2/15 14:12
ユウスケの御託126/2/14 12:52
凄いぞ!TOP10 LGBTIQの詩人たちの英詩翻訳 しょの ...室町 礼0+26/2/14 7:22
『越境の衝動』 第七章A/決壊の兆し[group]板谷みきょう126/2/13 16:55
『越境の衝動』 第六章/語りの席[group]026/2/13 16:53
『越境の衝動』  第五章/風が去って手に残るもの[group]126/2/13 16:50
小説の習作 原稿用紙五頁 #07田中教平326/2/13 11:13
凄いぞTOP10 番外編「ネット妄想批評の迷妄を糺す」室町 礼126/2/13 6:23
邦洋酒専門誌 スメタナ 82年9月増刊 「わたしと家庭のウィ ...竜門勇気226/2/12 22:40
クレクレ星人の独り言「今までで最強の式」42ジム・プリマ...126/2/12 18:32
小説の習作 原稿用紙五頁 #06田中教平326/2/12 14:06
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小説の習作 原稿用紙四頁 #05田中教平326/2/12 9:48
小説の習作 原稿用紙八頁 #045*26/2/11 16:18
咲子④たま2*26/2/11 13:25
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『越境の衝動』 第一章/越境の衝動[group]板谷みきょう026/2/11 11:07
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