[15]佐々宝砂[2005 04/24 02:37]★2


「蟻地獄」

ありぢごくは蟻をとらへんとて
おとし穴の底にひそみかくれぬ
ありぢごくの貪欲(たんらん)の瞳(ひとみ)に
かげろふはちらりちらりと燃えてあさましや。
ほろほろと砂のくづれ落つるひびきに
ありぢごくはおどろきて隠れ家をはしりいづれば
なにかしらねどうす紅く長きものが走りて居たりき。
ありぢごくの黒い手脚に
かんかんと日の照りつける夏の日のまつぴるま
あるかなきかの虫けらの落す涙は
草の葉のうへに光りて消えゆけり。
あとかたもなく消えゆけり。

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「利根川のほとり」

きのふまた身を投げんと思ひて
利根川
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