[88]千波 一也[2005 09/26 02:23]★6
に時はなく、姉の虚ろな幻が揺れる
今 6時4分、と決めておこう
虫の息に似て うなじをくすぐる風一陣
それは熱風。褐色の、缶コーヒーの。
あるいはぬるくなった姉の手の そんな褐色
指先に燃える爪だけが やや異質
新たな居場所を求めて虫たちは姉の爪に バスの影はその幻に
鈍い銀の硬貨を握らせる
そういえば 傘の柄も銀だった
バスの影が震えている
膝の震えを虫たちに気付かれぬよう そっと
褐色の時刻表に歩み寄り
届かない幻のバスに 気づかないふりをしている
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