[52]ヤギ[2005 05/29 22:47]★4
五月二十九日夜
一行のような二行のような
ヤギ、かぜきり、田代深子が
説明し難い順番で
「恋稲便り」
さざ波立つ水田でひとり溜息をつきますと
「申す申す」と声をかけられたのです
ふりかえると麦藁帽子をかぶった牛が
やさしい目でなにやらいいたそうにしています
なにかと問えば牛の云う
「わが家の嬢さん旦那あなたに恋い狂い」
まくった腕がじりじりといいまして
「それならば、それならば」と答えたのです
牛の目になにやら剣が宿りまして
「承知だね?承知だね?」と畳みかけ
田に踏み入って荷を降ろし
不可視の扉を開いて一言「いらっしゃい」
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