ポイントのコメント
[朧月夜]
興味深く拝読させていただきました。 文章全体の妥当性というものは(そこに表されているモラルも含めて)言うまでもないことだと思われるのですが、最後に書かれている「文章を書くこと、読むことの二義性」ということにおいては、実際はこれは「一義性」なのでは? というのがわたしの解釈になるかなあ、という感じです。 「読むこと」と「書くこと」とは一つの事件についての両面に過ぎませんし……歌合わせのことなどを考えれば、わたしの思っていることが伝わりやすいかな、と思うのですが。(そもそも歌合わせにしてもそうなのですが)「書くこと」にたいして、<書物>という性質上、そこには無数の「読むこと」が到来するわけですし、それを考えた場合には「二義性」ではなく「多義性」になってしまうかと思います。そこでは、「読むこと」と「書くこと」とは単純には対比できないですし、「執筆」や「閲覧」またはより<書物の受容>を広く取れば「鑑賞」といった行為もそれぞれ一つの事象には還元できない──という思いが、わたし自身にはあります。 ネット社会やマスメディア、あるいは大学の講義などにおける(それ以外のもっと一般的な読者における読書については、ここでは除外します)、「書かれたもの」にたいする様々な解釈(……というのは、おまるさんも多分言っていらっしゃるように、それは<文化的>な側面を持つものだと思うのですが──つまり、必然的に多様になる)は置いておくとして、最近のわたしは認知症の父と接するなかで、言語というのは意味を超えた行為であるという思いを強くしていて、分かりやすい例を挙げれば、聾唖者、盲人、そのどちらでもない健常者、という人たち(これももっといろいろな対象が存在し得ますね)における「言葉」というものを見つめた場合、それは本当に<一つの現実>となり得るのか、という思いがあります。 おまるさんの作品については、この投稿も含めて興味深く感じておりますので、おまるさん自身における<書物>あるいは<書かれたもの>の「二義性」というものがどういった本質を表しているものなのか、あるいはどういったエフェクトを持つものであるのか、といったことをもう少し詳しくうかがってみたい気がしました。 ちょっと、論戦とか、そういったことを望んでいるわけではないのですけれど……単純に、おまるさんの思っていらっしゃることをもう少し深く知りたいかな、という感じです。 追記です。 丁寧なご返信をありがとうございます。 >「読む」と「書く」も、その根幹に人格構造があるはずです。したがって、その者の現実認識をそのまま反映したものであると、わたしは考えています。 についてですが、そのことはひだかさんなどともお話するなかで、十分にわたし自身でも認識しておりまして、気になったのは最後の部分の<二義性>についてなのですね。 コメント全体を読ませていただいて、おまるさんにおいては、読者の反応もまた「書かれるもの」「書かれ得るもの」として「その者の現実認識」に一元化されているのだと思われ、「読むこと」も「書くことも」同一の俎上に載せられているのかな、ということを感じました。 そうしますと、単一事象の作用と反作用という意味合いにおいて、二義的であるのですね。……そう解釈いたしました。 蓮實重彦には詳しくないのですが、「テクスト的現実」というのは、村上春樹に言わせれば「嘘」、フォースターに言わせれば「幻想」ということになるのかもしれませんが…… >では「そうではない解釈の姿勢」とは何かというと、そのまま言い換えてしまえば、=「テクスト的現実」に拘泥しない、という態度、姿勢ということになる。テクスト的現実とは異なる「現実」に重きを置くということですね。 これについては、ここでの「異なる『現実』」というのが、いわゆる「リアル」のことなのか、テキストから与えられる理性/悟性/感性によらず、ただ「現実的な解釈」として表現を捉えるということなのか……。少し迷いました。 ただ、本文中の >自由で開かれた情報発信の場でおこなわれた(”大衆の受容”をもっとも濃縮した形としての)「解釈」が「間違い」だと、誰が断言できるというのだろう? に関しては、わたしも同じ意見を持っています。完全に一致はしないのですが。さらに言うと、それに続く >…わたしは、解釈の妥当性も、テクストに内在する自明なものなどではなく、読者たち(そこに作者も加われば僥倖だ)が「つくる」ものだと考える。 などから、例えば古典の「アーサー王物語」などは、読者がよってたかって二次創作を行った結果、紡がれていった「多数者の物語」であった、ということを思ったりします。有意義な会話をありがとうございます。 ---2024/11/02 10:51追記--- ---2024/11/02 10:52追記--- ---2024/11/02 10:53追記--- ---2024/11/02 12:24追記---
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