ポイントのコメント
[鵜飼千代子]
ジャムの種類を書かないところが、この詩のツボじゃないのかな。 「清潔」ですよね。「プロポーズの言葉はふたりの宝物にしたいです。」なんて言ってしまいそうなねむみちゃん。 「書かないから想像される」ということについて、ねむみちゃんが意識をして発表したのかどうかはわかりませんが、「透けて見えるから共感できる」という読者ではなく、「ねむみちゃん、今度は何を見つけたの?」と、立ち入らず見守りたい読者に共鳴する詩なのではないでしょうか。 軽井沢でジャムを選んだのです。何ジャムかは、別に言わない。選んだジャムの種類が、占いのようにその時の自分を示すものでもない。 詩の言葉たちの持つ「清潔さ」が際立ちます。 隠された内容が気になるときに、塀の節穴から覗き見させられるような嫌な感じの強要がない。この詩を読んで「共犯者にするなよ」と思う人はいないでしょう。隠されたジャムの種類が何であったとしても、それを探らせようとする打算や嫌らしさがない、そこがこの詩の美しさなのだと思います。 サーカス小屋のテントの隙間から忍び込み、正当な資格は無いのにミラクルを体験することや、裏社交界の含み笑いのお楽しみの日常とは違う、お日さまの下の愛らしいはにかみだと感じます。 先日、詩の連れ合いと生活エリアの掘り起こしも兼ねて、いつも歩いている場所のぶらぶら散策を一緒にしたのですが、鏡面のパートナーと歩くのは楽しいですね。ひとりでは考え付かないことしかお互い言わないので。(笑) 各々、氷菓を食べたり立ち飲みをしていたら、コスプレのような人たちが前を横切っていく。「なんでしょう?」と足を運んでみると、商店街で妖怪のお祭りをしていました。 商店街に出ている出店(コミケの感じ)を一件一件拝見していると、そのひとつのブースにビニール包装された本が。 「この本は小説ですか?」と伺ったところ、「依託なのですが、小説です。BLなのですが(^^ゞ」と。 よく見ると、「BLです」と書いてある。「BLって何でしょうか?」とわたしが尋ねたところ、「男性同士の恋愛を描いた小説です」とはにかまれてしまいました。 腐女子か!と「失礼しましたっ!」と脱兎の如く立ち去ったのですが、購入して読ませて貰えば良かったなと今頃考えています。 高校の頃、女子のプレハブの更衣室に、男色雑誌「薔薇族」が投げ込まれていました。夜間の学生の仕業だと決めつけていましたが、みな触らずにスルーしていました。 自らが請け負った性が、その通りでない人がいる、そういう人が「変態や変質者ではない」ということは、現在では知られていることですが、今回の本の内容は読んでいないのでどうなのかはわかりませんが、「BL」と聞いたとたんに逃げ出すのでなく、もう少し膝をつめることが出来たのではないのかなと思っているのです。 自作の妖怪グッズをブースに並べて、依託の本を置いて、お弁当を頬張りながら会話をしている女性は清潔に思えました。 同じことを扱うのにでも、清潔と下世話がある。「詩の行間を読む」レベルの感性にしてみても、キャッチする、出来ない、危うく繊細な違い。その稀少さが宝物。 そんな再発見をしながら、ねむみちゃんの詩は清潔なので、汚されず羽ばたいて欲しいと思ったのでした。 ---2014/09/02 22:13追記---
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