ポイントのコメント
[アラガイs]
粉雪が舞う道路を歩いて渡る人はいない。宵いだというのに、不思議と気配のしない街だった。 年の瀬も近いころ、ふらりと入った居酒屋の座敷から、聞こえてきたのは三味に躍るにぎやかな唄い声 。酒がうまい。日本酒といえば、この地方の人たちがあおるのは冷酒だ。それもわかる気がする。 (鰰)は一体どこを食べたらよいのか、店のお姉さんに尋ねてみる 。 お姉さんはちょいと箸を手に持ち(あ〜もったいない、ここよ) と、大きな卵をざっくりとつまんで自分の口に運んだ 。 しばらくすると流しのお囃子も加わって、店全体が民謡の宴に盛り上がった 。酒にほろ酔い気分もすっかりできあがり、店から紹介されたスタンドを覗いてみる 。 カウンターはけっこう客で込んでいたが、すぐに郷土話しで打ち解けた。名刺と一緒に菓子のお土産まで貰って店を後にする 。ひっそりと灯りに粉雪は舞い、歩く人の姿はない 。秋田の街は、そんなあったかい処だった 。
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