【童話】ある乞食の話(第一話)/プル式
ある日乞食は言いました。私にも人生があったのだと。少年はその呟きを、たまたま、通りすがりに聞いたのでした。
そうしてそれを聞いた途端、その場を離れなければ為らないと感じました。しかし、少年がいくらそう思っても、少年の足は、まるで木の根が生えた様にぴったりとその場に張り付き、一向に言う事を聞かなくなってしまったのでした。
「私にも、人生があったのだ。」
再び乞食は言いました。そうして、とつとつと一人、話し始めたのでした。
その昔、乞食は商人でした。商人と言っても、毎日、町から町へ渡り歩く、いわゆる行商というやつで、その日暮しの気ままな毎日でした。勿論、売り上げの芳しくない日も在りましたが
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