光気降譜/木立 悟
冬
中心と空洞
球面と化石
向かいあえない
水の砦
しあわせ
ふしあわせに触れずに
消えるしあわせ
夜の道をはばたく
濡れた鉄の火
曇りの地図が
晴れて見えず
明るさのなか泣きながら
誰もいない地を
すぎてゆくうた
淀みにまたたく感情が
あたたかくやさしく
まわりを押しのけていることに
あたたかさもやさしさも
またたきさえも気付かずにいる
空を飛び去る音の影が
風車のようにまわりつらなる
はじまりの雨を山は昇り
姿はいくつも重なりつづけ
音の影にゆらめきつづける
流線のかけらが
道の水をなぞり
硝子は小石の波の下から
夜の明るさを見つめている
墓地に立つ白
曇の降る道
どこまでもひとりの
羽を歩む
灯りの下に遅くなるもの
空をひらく風を呼ぶもの
涙のなかをのびてゆく火の
行き着く先を知っているもの
星を知らずに星を呑むうた
かがやく胸と喉を躍らせ
ふしあわせの背に触れてゆく
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