離脱願望/岡村明子
眠れない夜に
窓から差し込むおぼろな光が
私を月の世界へ連れて行ってくれやしないかと
目を凝らして
そのうち光と影の境界もあやしくなってきて
本当に自分は今
月へ向かって
旅立とうとしているのかもしれない
と
必死で考えている 鼓動が
掛け布団を震わせている
その 重み
目を閉じて
赤や緑やきいろの光が
拡散して収縮して
遠近法のように
消失点を脳天のかなたに描き出したとき
脳内タイムマシーンは
魂を信じられない速さで向こう側に連れて行く
その興奮に
息をはずませているその首の後ろの枕
その 重み
肉体を離れて思考だけになることはできないのか
無重力状態のように
(ひとしきり遊んだら
また帰ってくるから
いまはたましいだけにしてくれないかな
肉体だけの自分なんて
けして
振り返って見たりしないから)
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