先魚進紀/木立 悟
 



魚の群れが夜を飛び
鱗と涙を落としては
何も無い地を焼いていた
火の端々が鳥になり
さらに暗い夜へと去った


雲と砂の波のなかで
魚は涙を閉じていった
白と銀のへだたりの
わずかな わずかな痛みのなかで
魚は力を閉じていった


数え切れない小さな鳥が
荒れた海に重なり 島をつくる
下になった鳥のほうから
少しずつ魚になってゆく
魚は静かな海底に堕ち
幾つもの音のまばたきを飛ぶ
やわらかな羽の耳になり
夜の涙を聴きつづけている




http://members.at.infoseek.co.jp/warentin/kidati.htm



   グループ"四文字熟語"
   Point(7)