先魚進紀/木立 悟
魚の群れが夜を飛び
鱗と涙を落としては
何も無い地を焼いていた
火の端々が鳥になり
さらに暗い夜へと去った
雲と砂の波のなかで
魚は涙を閉じていった
白と銀のへだたりの
わずかな わずかな痛みのなかで
魚は力を閉じていった
数え切れない小さな鳥が
荒れた海に重なり 島をつくる
下になった鳥のほうから
少しずつ魚になってゆく
魚は静かな海底に堕ち
幾つもの音のまばたきを飛ぶ
やわらかな羽の耳になり
夜の涙を聴きつづけている
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