月下怪談/千月 話子
琵琶の鳴る 能楽堂の床板に
今宵 満月の光り溢れ
ばちに当たる 光り雫 飛び散り
聞き入る人々に 幻想を
降りかけては 歌い
掬っては 奏でる・・・・
齢 19のわたしの帯を
力ずくで引き剥がした 男を今も
憎んで 探して 震える白い手
「わたし、死んでしまったの?」
「愛しい人に、もう会えないの?」
お前のせいだ! お前のせいだ!
汚れた黒い手 お前のせいだ!
見えぬ涙は 辻占いの
結果をいつも 沈めて変える
「占い人に 罪は無い」と
寺の 仁王立ちに戒められた
強い思いは 地中に掴まれ
会いたい人にも 会えないと
泣いて 泣いて 泣い
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