出発地点/紅柳みつば
 
突然
季節を忘れて
しまったかのような
 
そんな暖かさに
包まれた夕暮れ
 
 
縄跳びに夢中になる
見知らぬ子供たちの
笑い声が高く響いて
 
向こうの方では
あつあつの焼いもをのせた車がのろのろ
 
お決まりのように
一声落とすカラスは
そろそろ
お家へ帰るの?
 
 
目に
耳に
つくもの全てが
何だか懐かしくて
 
何となく
ポケットに手をつっこんで
電信柱の影を踏んで歩く
 
 
少し冷えた風が
横を通り抜け
 
 
何気なく
ふと見上げた空は
思わず足を止めるほど
私の前に果てしなく
広がっていた
 
大きなキャンバスに
水彩絵の具で描かれたような
透き通るようなそれに
 
初めて空を
見た気がした
 
 
 
ずっと
ここにいたよ
 
ずっと君を
見下ろしていたよ
 
 
そう主張する
うっすらと伸びた
今日のグラデーションたちに
 
私は何故か
ささやかないいわけ
 
 
 
 
「見えなかったの」
 
   グループ"四文字熟語"
   Point(5)