群集挽歌/岡部淳太郎
 

西から 東へと
たださまようのか
群集よ

君たちはまぼろし
まぼろしの人間であり
顔も 名前もない
けして僕の人生の中に降りてくることのない君たちに
ひとりひとりに名前をつける
街灯の下でふるえる
街頭の中にたむろする
君の名はシゲアキ
君の名はミナコ
君の名はタケシ
君の名はソノコ
それは間違った名前であるのかもしれないが
君たちに
ひとりひとりに名前をつける

ふらふらと
さまようのか
群集よ
人の中に溶けて
街の中に溶けて
ふらふらと
生から 死へ
死から 生へと
たださまようのか
群集よ

君たちはまぼろし
まぼろしの人間
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