匿名文化/チャオ
 
土砂降りの晴天のなか、駅を降りた少年は
まっすぐ立ち向かうべき仕事場を放棄した

夜はまだ長い。と、呟いた手のひらの生命
それでも、まだ電車は過ぎていくのだと、
かすかな罪悪感の中で、思い至ったらしい

電車が過ぎる。時として人生だって同じだ
いつまでも続いて、休む間もないくらいだ

銀色の路面が、まぶしく反射して、少年は
目を閉じるか、目を見開くかしか選べない
夜はもう過ぎた。と、握った鍵になげいた

仕事場では、少年を非難しているだろう。
少年は、仕事場を忘れた振りしてるだろう

大体が、少年も、仕事場も、ビルの一部で
よくある話の一角だと、CEOは言った。

ふてぶてしいのかもしれない。それでも、
すれ違う人の視線の奥。手を上げなくても
微笑んでくれるような、そんな甘い話でも
匿名文化よ、聞かせてくれはしないのか!

   グループ"四文字熟語"
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