初空列車/からふ
とてもかたい列車で
おもちゃみたいな街から出て行く
レールをわざと踏み外して
けたたましく列車はのぼる
神秘だねって笑う暇もなく
割れた空へと進んでいく
にわか雨が過ぎていくのを
窓を閉めることもなく
まばたきもせずに見ている
生暖かい雨は
まるで馬鹿みたいだったから
放っておいた
飲みかけのサイダーの中で
雨粒が炭酸と踊っているのに
気づかない振りをして
飲み干してしまった
石鹸の香りが列車を見上げている
終点を知らずにのぼっていく
ビー玉になってしまった街は
うさぎみたいで
撫でようと手を伸ばそうとしたけれど
列車はやっぱりとてもかたくて
そのままおもちゃは片付けないで
そうっと散らかしておこうと思う
下を見ると
今まで知らなかった空が
さみしそうに笑っていた
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