曼珠沙華/有邑空玖
もう何も視たくは無いのだ。
赭い花を手折りたいと思い、庭へ降りたは良いが
一面の花の群れにふと恐ろしく成ってしまう。
どれを選んでも
触れた途端に枯れてしまいそうだ。
其れを嗤って見て居るのは 君。
何を視ようとも色付かないのならば
此の眼球を君にあげよう。
花を手折る事の出来ぬ指も
妄言に満ちた此の頭蓋も不要。
腐敗してゆくのだ。
もう何も知りたくは無いのだ。
彷徨う儘にいっそ
両足で踏み切れば赭く染まる。
もう何も視たくは無いと云い
もう何も知りたくは無いと云った 僕。
其処で嗤って見て居るのは
君の骨。
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